下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤とは足の血管がふくれてこぶの様になる病気です。体のすみずみに行きわたった血液が、心臓に戻る血管を静脈といい、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見えるようになった状態を下肢静脈瘤といいます。

静脈瘤が下肢に起こりやすいのは、心臓から遠い位置にあることや、人が立っ て生活していること、立ち仕事、妊娠・出産、遺伝が関係しています。

参考リンク:2分で分かる医療動画辞典 ミルメディカル

静脈瘤/2分で分かる医療動画辞典 ミルメディカル

下肢静脈瘤の悪化

1

ステージ1 静脈瘤

足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見える。

2

ステージ2 腫脹

炎症などが原因で、血液成分が溜まって、足がはれ上がります。

3

ステージ3 皮膚変色

血液循環が悪くなり、赤みがかった皮膚の色が茶色や黒っぽく変色し皮膚炎になります。

4

ステージ4 皮膚潰瘍

皮膚に穴があいている状態です。皮膚潰瘍は非常に強い痛みを伴い、静脈瘤の最も重い状態です。皮膚潰瘍のある方は手術を強くお勧めしております。

主な症状

初期症状

下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんが、血管が浮き出してくる前の初期にもある自覚症状は、「むくみ」や「足の重だるさ」「足がつる(こむら返り)」「足のほてり」「足のかゆみ」「ピリピリしびれる」「足が痛い」があります。

重症

治療せずに放置すると、進行して足の皮膚が変色し、湿疹や最後には、傷ができていつまでも治らなくなってしまう皮膚潰瘍という状態になってしまいます。

検査方法

下肢静脈瘤は、専門医師による精密検査がとても重要です。超音波を使用した「下肢静脈エコー検査」を行います。この検査で、どこの静脈にどの程度の逆流があるかを調べ、治療の必要性やその方法を判断します。

下肢にゼリーを塗りそこに超音波発信器(プローブ)を軽くあてるだけで、痛みは、まったくありません。ふくらはぎをもんで、逆流の有無を見ます。

検査時間は、患者さんの病気や状態等で異なりますが、片足約10分程度です。

当院では、専門外来「血管外科」を開設しております。専門医師による専門外来診療を行っておりますので不安・疑問をお持ちの方は、お気軽に当院へご相談下さい。

比較的症状が軽微な場合の治療

運動療法

まずは、毎日ふくらはぎの筋肉を使ってよく歩くことで、ある程度進行を遅らせることが可能です。ハイヒールは、よくありません。体を締め付けるような下着も避けて下さい。

立ち仕事の場合は、1〜2時間に一度休憩を取るように心がけて下さい。その際は足を少し高くして休むことをお勧めします。(例、椅子を二つ用意して片方に座り、片方に両足を乗せるなど。)

立ち仕事中も棒立ちはできるだけ避けて、なるべく歩く、足踏みをする、爪先立ちをするなど、ふくらはぎの筋肉を使うようにしましょう。

椅子に座っている時も、長時間同じ姿勢を取り続けないようにして下さい。寝るときは、足を体より少し高くすると効果的です。これらのことは、下肢静脈瘤の予防にもつながります。

当院では、リハビリ施設も完備しております。専門の理学療法士がリハビリを通して運動療法の指導も行います。

弾性ストッキング

医療用弾性ストッキングは、普通のストッキングとは違う特殊な編み方で、足を強く圧迫するように作られています。静脈瘤を含めた表在静脈をしっかり圧迫することで、血液が心臓に戻りやすくなります。

自分の体に合ったサイズと強さの弾性ストッキングをしっかり着用すれば、静脈瘤の進行はある程度止まりますが、靴下なので誰でも簡単に始められる治療法ですが、静脈瘤が治ることはありません。ただし、静脈性潰瘍には欠かせない治療法です。

※医療用弾性ストッキング購入について
医療用弾性ストッキングは、当院で購入できます。但し医師の指示のもと、症状に合わせて、その方に合った肢のサイズ等を測定させて頂き医療用弾性ストッキングをご購入していただきます。中圧薄手ダイプと中圧厚手の2種類がございます。

外科的処置が必要な場合の治療

ストリッピング手術

下肢静脈瘤の根治的な治療法として古くから行われている手術です。弁不全を起こしている静脈を引き抜いてしまう方法です。

「ストリッピング」とは「抜去する」という意味で、その手術においては、弁が壊れて逆流をきたした病的な静脈を文字通り抜去(切除)して取り除きます。具体的には、伏在静脈にストリッパーというワイヤを挿入し、静脈をワイヤに縛り付け、ワイヤと一緒に静脈を抜き取るという方法です。

足の付け根や膝など皮膚を2〜3cm程度切開し、弁不全を起こした表在(伏在)静脈の中に手術用ワイヤーを通して、この血管を引き抜きます。正常な静脈としては機能していないので、抜き取ってしまっても下肢の血行には全く問題はありませんし、再発率が低い治療方法です。

高位結紮術(こういけっさつじゅつ)

高位結紮術とは、逆流の発生源である鼠径部(そけいぶ)の静脈部分的に切除し(とりのぞき)、断端を縛って(結紮)、血液の逆流を止める治療方法です。

まず、局所麻酔を施した後、鼠径部(脚の付け根)を切開し、患部である静脈を長さ5cm程切除します。その際に血管の断端を縛って逆流を完全に止めます。

切開部分の傷はストリッピング手術のものより小さく、また、局所麻酔であるため日帰りの治療が実施できるというのが、高位結紮術のメリットです。血液が逆流することが主な原因で、高位結紮術で静脈をできるだけ高い位置で縛って逆流を防げば、症状を抑えることができます。

下肢静脈瘤血管内焼灼術 血管内焼灼高周波(ラジオ波)治療

血管内焼灼高周波(ラジオ波)治療とは、下肢静脈瘤の治療として海外で多く実施されている治療法の一つです。全世界で100万件以上の治療実績があり、日本国内でも平成26年6月より保険適応となりました。

手術方法ラジオ波焼灼術は、皮膚に開けた小さな開口部から逆流を起こしている静脈に高周波アブレーションカテーテルを血管内(静脈内)に挿入し、カテーテルから放出される高熱により血管内の病変部を焼ききる治療法です。